「完璧主義」は、文字通り“完璧”であることを追い求め、何に対しても究極を目指すことにこだわりを持つ性質のことです。
不完全なものや確信を持てないことを嫌うため、小さな失敗や自分の思い通りにいかないことが発生すると、強いストレスを感じてしまいます。
物事に対してなかなか妥協できないこと、こだわりが強すぎることで「生きづらさ」を抱えやすいのがこの性質の特徴です。
完璧主義は、思考の偏りを修正していくことで改善することも可能です。
このページでは、『完璧主義が作られる原因や問題点』のほか、『完璧主義から抜け出す方法』を解説していきます。
この記事の目次
完璧主義はどう作られる?
まず最初に、『完璧主義はどのように作られていくのか?』をみていきましょう。
幼少期の育てられ方
完璧主義の性格は「幼少期の育てられ方」が起因していることがあります。
中でも次のような育てられ方をすると、完璧主義になりやすいと言われています。
- 過度に教育熱心に育てられた
- 兄弟と比較された
- 成功したときだけしか褒めてもらえなかった
- 過干渉な親だった
- 期待をかけられすぎた
このように、親の不適切な言動や偏った育てられ方によって、考え方や捉え方に歪みが生じる場合があります。
失敗することや劣っている点を他人に知られることに対して過剰な恐怖感を抱き、その結果、常に完璧を追い求めてしまうのです。
理想や成功の追い求めすぎ
10代~20代といった若いころに、家族や友人、あるいは書籍やセミナーなどで、「理想・夢・成功」を強く意識させられることでも完璧主義が作られることがあります。
理想や成功に対して希望を持つこと自体は悪いことではありませんが、高すぎる理想や夢を追い求めるときには、何に対しても”ストイック”になりがちです。
そのストイックさに美学を持ってしまうことで、何に対しても妥協を許さぬ完璧主義が作られてしまうことがあります。
過去のトラウマ
過去に心が強く傷つけられるようなことがあり、それが”トラウマ”になることでも完璧主義になることがあります。
例えば、大勢の前で失敗して恥をかいた経験がトラウマになると、極端に失敗することを恐れ、物事を完璧にこなそうとすることがあります。
こうして完璧主義が出来上がると、他の人が気楽な気持ちで取り組むようなことにでも、「失敗は許されない」と恐怖に似た感情をもってしまうのです。
こうした状態を「失敗過敏」といい、極度の人見知りや対人不安の原因になることがあります。
▼人見知りや対人不安の克服法についてはこちらで学ぶことができます。
完璧主義の問題点、生きづらさ
何かを高い水準で成し遂げることは素晴らしいことですが、「こうでなくてはならない」「こうあるべきだ」などと様々な制限を課してしまうと、以下のような“生きづらさ”や問題点を抱えやすくなります。
「完璧な自分」を装って生きなくてはならない(素の自分を出せない)
完璧主義の人の中には「物事を自分の思った通りやらないと気が済まない」という考えを持つ人がいますが、この他にも、「失敗する自分を他人に見られたくない」という思いを持つ人もいます。
後者の完璧主義者は、『できない自分』を徹底的に隠そうとすることで、ごく一部の人間にしか素の自分を表現することができなくなることがあります。
対人関係の中で自分の失敗や弱みを見せられないと、本心で語り合える仲間ができにくく、職場においては孤立してしまうことも少なくありません。
また、とくに緊迫した場面でないときにも、周囲に人がいるだけで強い緊張とストレスを感じることもあるでしょう。
周囲に人がいると疲れることが多く、「早く一人になりたい」という意識を常に持つことにもつながってしまいます。
本来、人間は他人と心を通じ合わせるとき、「最上級の癒やし」を感じる生き物だと言われています。
このとき、脳内では「オキシトシン」という幸福物質や「セロトニン」という鎮静物質が分泌され、心身ともに癒やされます。
こうした対人関係における癒し効果を得るためには、『失敗してはいけない』『ダメな自分を見せてはいけない』といった思考を修正していく必要があるでしょう。
ストレスを感じやすい
完璧主義の人は、そうでない人よりも「ストレス量」が多くなります。
本来ならもう少し気楽にとらえて良いことに対しても、精神・肉体の疲労をかえりみずに根を
どんな仕事でもそれなりのストレスはつきものですが、完璧主義の人は「絶対に失敗できない」という自発性のストレスをさらに付け加えてしまうのです。
自己嫌悪に陥りやすい
完璧主義の人は自分に厳しく、自分自身に対して「合格点」を出すことがあまりありません。いくら他人が称賛してくれたとしても、どこか受け入れることができないのです。
そして、自分で自分を認めないために「自己嫌悪」に陥ることも少なくありません。
人によっては非常に長い時間にわたって自分を強く責め続けてしまうこともあるため注意が必要です。
完璧主義を抜け出すための4ステップ
社会生活において何かと生きづらさを感じやすい「完璧主義」は、可能な限り早く改善するに越したことはないでしょう。
以下に、完璧主義を抜け出すために効果的な方法を4ステップにまとめましたので、ぜひ実践してみてください。
①完璧主義を捨てることのメリットをよく知る
「完璧主義をやめるとどのような良いことがあるのか」をよく知っておくことで、
意欲的に思考の修正に取り組むことができますし、継続性を保つことにも役立ちます。
- 周囲の目が気にならなくなる
- 「失敗すること」が怖くなくなる
- 新しいことにチャレンジする勇気が湧く
- 本来の自分を表現できるようになる
- 人間関係が良好になり心から気持ちの共有ができる
- 疲れにくくなる
- リラックスしているので新しい発想が生まれやすい
- 睡眠の質が良くなる
完璧主義から抜け出すことができれば、上記のようなメリットがあることをまずはしっかり覚えておきましょう。
②人はみな「不完全」であることを理解する
人は「完璧な人間などいない」ということは頭の中で何となく分かっていながらも、不完全のままでいることを嫌います。
しかし、完璧を求めるがあまりに生きづらさを感じたり、対人関係で息苦しさを感じるようであれば、『不完全』であることを認め、それを改善していくことが望ましいでしょう。
完璧を捨てることができれば、『強いフリ』や『楽しいフリ』といった表向きの自分を演出する必要がなくなり、人付き合いが驚くほど楽になります。
不完全であることを受け入れるのに効果的な方法には、【自己主張訓練】があります。
自己主張訓練のやり方
自己主張訓練は、自分が不完全であることを体感で知ることのできる方法です。
やり方としては、『自分の知らないことを人に聞くこと』や、『苦手なことを人にさらしてみる』ことなどが挙げられます。
たとえば、
- 家電量販店に行き、(自分の知らない)パソコンの最新機能について聞いてみる。
- 自分が苦手なこと(スピーチ・片付け・料理など)について、人に相談してみる。
などです。
こうして人に『自分の知らないこと』や『苦手なこと』を話したり聞いたりすることで、少しずつ自分の不完全さに気が付き、そしてそれを受け入れることができるようになっていきます。
ぜひ実践してみてください。
③「普通であることの勇気」を持つ
完璧主義から抜け出すためには、心理学者「アドラー」の言葉を参考にするのも良いでしょう。
アドラーは、対人関係の中で生きづらさを抱えてしまう人のために「普通であることの勇気」という考え方を残しています。
『普通』とは、一般的に『平均』のことであり、集団の中ではとくに目立たない存在です。そのため、完璧主義の人は自分が”普通”であることを極端に嫌がります。
アドラーの「普通であることの勇気」は、まさにそんな完璧主義の人に効果的な考え方です。
人は周りと比べてどこか特別な存在になりたがるところがあります。
これは、“特別な人間じゃなきゃ人に認めてもらえない”という思い込みがどこかにあるからです。
この思い込みがあると、
- 『普通であることは無価値』
- 『普通であることは半人前』
- 『普通であることは無能』
といった、どこか『劣った存在』のように捉えてしまいがちです。
しかし本当にそうでしょうか?すべての人が特別な人間でなければいけないのでしょうか?
決してそんなことはないはずです。
輝かしい功績や秀でた才能がなくても価値のある人生はいくらでも送ることができますし、反対に『特別な存在でなければならない』という制限の中で生きることはとても息苦しい生き方になってしまいます。
“出来る自分”じゃなくてもいい。人に弱みを見せてもいい。欠点や弱みを含めた自分が本当の自分だ。
こう思えるようになると、『完璧でなくてはならない』という思い込みが和らぎ、生きるのがとても楽になるはずです。
④人に助けを求める
完璧主義の人は高いプライドを持ち合わせていることが多く、「人に助けを求める」ことが苦手な傾向があります。
『人に助けてもらうことは恥ずかしいことだ』
『自分の価値を下げる行為だ』
このような思い込みを持ち、自分がいくら困っていても他人に助けを求めることができません。
しかし人間は、もともと集団の中で助け合いながら生活してきた生き物です。苦難や障害を乗り越え、より良い暮らしを送るためにお互いに頼り合って生きてきたのです。
他人に助けを求めることは恥ずかしいことでも何でもなく、人生を豊かに生きるためには必要不可欠なコミュニケーションスキルのようなものです。
ですから、『人に助けてもらうことは恥ずかしいことだ』などといった思い込みに縛られず、困ったときには周囲に助けを求めるようにしましょう。
知らぬ間に自分に貼ったレッテルを外すことで、人に助けを求める苦手意識を和らげることができます。
最後に:
完璧主義には良い面もありますが、“生きづらさ”というリスクもつきまといます。
完璧主義から抜け出すことができれば、失敗や恥に対する恐怖感が和らぎ、行動へのフットワークがとても軽くなります。
まずは『不完全さ』や『普通』であることを受け入れ、「こうでなくてはならない」といった思い込みを外していきましょう。
そうすることで、今まで自分の中でタブーとして扱っていたようなことにも少しずつ心を開けるようになるはずです。
ぜひ、今回ご紹介した方法を読み返し、実践してみてください。
少しでも良くなることを願っています。
対人関係において不安や緊張を覚えやすく、実生活で精神的苦痛や疲弊を感じやすい性質や傾向を『シャイネス』といいます。
シャイネスの中には、『内気』や『恥ずかしがり』、『人見知り』といったものも含まれ、それが原因で人付き合いを避けてしまう方は多いとされています。
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